「高校生溶接研修会 夏フェス」見学記

「いろいろな溶接に触れて、より一層興味を持ってもらおう」をテーマに、東京都溶接協会は8月8日、9日の2日間、東京都立城東職業能力開発センターにて高校生溶接研修会 夏フェスを開催しました。
都内工業系高校6校より、1日目16名(生徒11名、教員5名)、2日目23名(生徒19名、教員4名)が参加。
講師として、同協会会員企業の前川製作所より3名、日鉄溶接工業より2名が招かれ、参加者の指導にあたりました。

講師の紹介

参加した生徒、教員、講師(8月9日)

3グループに分かれて研修開始

溶接初心者グループ参加者は、はじめに日本溶接協会制作の溶接教育ビデオ「アーク溶接作業の安全と衛生-確かな溶接作業をするために-」を視聴。その後、保護具の着用方法、溶接機の点検方法など基本を学び、アーク出しから手溶接(交流アーク溶接機使用)の多層盛りを体験しました。
「溶接って、面白い」「最初のアークを出すのが難しいけれど、頑張りたい」と弾んだ声がきかれました。

過去の溶接研修会参加者(講習経験者)および高校生溶接コンクール出場経験者の2グループも、保護具の着用方法等同様に確認してから溶接実習へ。
講習経験者は、溶接の基本を復習した後、手溶接の基本級A-2F(中板下向き突合せ)に挑戦。
コンクール経験者は、ネジとボルトを組み合わせてTIG溶接で接合するアート作品作り、半自動溶接についても学びました。
高校の機械科の授業で溶接があるという女子生徒。「学校ではあまり溶接する機会はありませんが、今回先生に誘われて参加しました。溶接は楽しいです」
また、他の生徒からは「講師の説明がわかりやすかった」「前回の研修時より、ビードがきれいになった」等の声がありました。

講習経験者グループの女子生徒
コンクール経験者 TIG溶接の様子

 【参考】溶接の資格や種類
  ・溶接技能者について(日本溶接協会 溶接lab)

会場にはバーチャル溶接機(Lincoln Electric社製)が置かれ、合間を利用して参加者がゲーム感覚で手軽に溶接を体験。狙い位置や溶接速度等により、リアルタイムで自動採点されます。
画面に点数が表示されるごとに、周囲の生徒から歓声があがっていました。

「嫉妬するぐらい上手になる」

こちらは、研修会で指導している日鉄溶接工業の石井講師の言葉です。
数年前から指導しているそうですが、毎回、参加生徒の上達には目を見張るほどのものがあるとのこと。「生徒の皆さんがあまりに上手になるので、うらやましい」とうれしそうに話していました。
各講師は自らの経験や知識を活かし、生徒からの質問に丁寧に答えながら、熱心に指導していました。

今回は講師として

前川製作所の瀧下講師は、社会人1年生。この春まで高校生でした。
高校生溶接コンクール出場経験もある実力を持っています。
この研修会にも過去参加しており、それが縁で現会社に入社。今回は教える立場での参加です。
「研修会で学んだことがとても役立っています。参加して練習するごとに上達していくのがうれしかったです。今後は講師としていろいろ伝えていきたいです」
後輩たちを温かい目で見守り、アドバイスをしていました。

瀧下講師(前川製作所)

最後に

参加した生徒の皆さんからは、「溶接は難しいけれど、面白い」「もっと上手くなりたい」「溶接コンクールを目指して、頑張りたい」等の感想がありました。前向きな言葉ばかりで、うれしくなりました。
教員の方々も、「まずは溶接に触れてみることが大事なので、積極的に生徒に研修会参加等の声がけをしています」「学校での指導に役立つ経験ができています」とのこと。
研修会への参加を通じて同協会会員企業への就職につながることもあり、生徒にとっては就活の機会にもなるようです。

東京都溶接協会では「溶接はものづくりの要の技術!」とアピール、「溶接は面白い」「自分の可能性を広げよう」と、初心者をはじめとする高校生向けに研修会等を開催しています。
溶接業界では人材不足が深刻となっています。若年者に対し、溶接が魅力ある職業であることを伝え、溶接に触れる機会を増やすべく、今後も研修会への参加を呼びかけていきたいとのことでした。

東京都溶接協会
  https://www.jwes-1st.jp/

(株)前川製作所
  https://www.mayekawa.co.jp/ja/

日鉄溶接工業(株)
  https://www.weld.nipponsteel.com/

東京都立城東職業能力開発センター
  https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/vsdc/joto/