初めての溶接トライ! ~日本溶接協会新人職員の溶接1日講習体験記~

5月GW明けのある朝、2人の当協会新人職員が神奈川県川崎市にある(一財)日本溶接技術センターの玄関前にいました。
当協会では、より溶接の理解を深めるため、新人職員は溶接の講習を受けています。
4月に入社してデスクワークの日々を送っていた彼ら。初めての溶接に緊張した面持ちで教室に入っていきました。

まずはビデオ学習から

教室では、講師としてセンターの小笠原先生が迎えてくれました。
前週に溶接の学科講習を受講したものの、実技はまったく初めての2人。不安を口にしながらも、作業着に着替えて準備します。
小笠原先生から「今日は午前手溶接、午後は半自動とティグ溶接を実際にやってもらいます」
初めに溶接の教育ビデオを見てから、基本的な溶接の種類などの講義を受けました。

ビデオで学習
講師の小笠原先生の話に聞き入ります

午前:手溶接(被覆アーク溶接)

いよいよ実技講習です。
安全に行うため、防じんマスク、保護メガネなどの保護具をつけて実習室へ。
最初に先生がアーク出しを実演、電流や運棒などについて解説。続けて、今日の課題である溶接技能者評価試験 基本級 A-2F(中板・下向き)の説明もします。
2人は溶接面越しに真剣に話をききます。

そして、各自溶接ブースへ。
実際に溶接してみると、アークが上手く出せません。後ろで見ていた先生がアドバイスをします。
だんだんコツがつかめてきて、中板の溶接にも挑戦。初めに驚いていた火花にも慣れてきたようです。
時折、お互いの様子を気にしながら作業をします。

今まで無言で取り組んでいた1人が、突然「楽しい!」
少し余裕がでてきたようです。
隣で溶接しているもう1人も、「負けていられない!」とお互いがんばります。
1層目が終わり、ていねいにスラグを除去していきます。
勢いにのって、仕上げ層まで行い、溶接ビードをひくことができました。
「2人とも初めてとは思えない、いい出来だね」という先生の言葉に、朝の不安な顔とは一変した笑顔が見られました。

午後 その1:半自動溶接(炭酸ガスアーク溶接)

半自動溶接の特徴-手溶接より溶接速度が速い、作業効率が良いなど-や、機器の取り扱い方の説明から始まります。
溶接してみると、手溶接との違いに戸惑っていましたが、次第にスムーズな動きに。
「トーチをずっと持っていると、結構重くて腕が痛くなりますね」
先生からトーチの持ち方や姿勢などのちょっとしたコツを教えてもらい、「楽でいい感じです」と楽しそうです。
先生も2人の様子を見ながら、「いいですね~」を連発。
無事に課題 SA-2F を完成することができました。

午後 その2:ティグ溶接

講習の時間も残りわずかとなってきました。
先生から「1日で3種類の溶接をやるのは大変ですが、少しティグ溶接もやってみましょう」
ティグ溶接は、アークが安定しビードが美しいのが特徴ですが、難易度の高い溶接法。
最後までがんばるぞと、先生の実演を見つめます。

いざやってみると思うようにできず、難しさを実感しました。

最後に、今日のまとめとして先生からコメントをいただきました。
「今日やったのは、溶接の基本的なことのほんの一部です。溶接の種類は多くあり、ひとつひとつ奥が深いです。3種類の溶接を1日でやるのは、溶接が初めての方にはとても大変だったと思います。それでも初めてとは思えないくらい、素晴らしい出来でした」  

参加した2人も、充実した1日となったようです。

よい体験ができた1日でした!

体験を終えて

火花が散ったり、溶接する板が思った以上に熱くなったり、腕が痛くなったりと溶接って大変だなと実感した2人。
それでもまたやってみたい、楽しかったと笑顔で話します。

ほんの少しの体験でしたが、あらためて溶接を仕事としている人ってすごいなと心に強く感じたようです。
仕事で見ているきれいな溶接ビードのようにできるまで、どのくらい練習したのだろう。
溶接でつくられた高層ビルや電車などが完成するまでの、溶接技能者の技術力に感嘆し、思いを巡らせます。
2人は、今日の経験を活かして、さまざまな視点から仕事に取り組みたいと話してくれました。

【参考】日本溶接協会 よくわかる!溶接lab
 ・溶接技能者について
   溶接の資格や種類などを紹介。
   被覆アーク溶接、炭酸ガスアーク溶接、ティグ溶接についての動画もあります。
 ・溶接界の今-社会を支える溶接
   ものづくりの基盤技術といわれる溶接。
   空に、海に、陸に、生活にと社会全体にあふれています。
   溶接でつくられた製品の一例をマンガでも紹介。


  (一財)日本溶接技術センター
    https://jwsc.jp/