鍛鉄(たんてつ)と溶接(ようせつ)

鍛鉄という言葉をご存じですか?
文字の通り、鉄を鍛えること。高温に熱した鉄をハンマーで叩き、曲げ、延ばすことによって、自在に形を作り出す技法です。
鍛鉄製品(ロートアイアン)は建築装飾で用いられることが多く、門扉、手すり、表札など、街のどこかで見たこともあるかと思います。
先日、「ぶらり途中下車の旅」(日本テレビ)で放映された埼玉県草加市の鍛鉄工房では、放映後、溶接ワークショップの問い合わせが多いそうです。
ちょうどワークショップが開催されるときき、10月のある日工房を訪問しました。
「ドリップ珈琲スタンド」作り
鍛鐡工房イヌイでは、溶接が初めてという2人の女性が、説明を真剣にきいていました。
体験メニューは、ドリップ珈琲スタンド。まずゲージや治具を使って鉄の丸棒を曲げるなどの作業をして、パーツを作っていきます。
手で鉄を曲げるときいて、うまくできるか不安そうでしたが、講師の説明を聞きながら治具に沿って丸棒を曲げていきます。少し力が必要でしたがきれいに形ができ、思わず歓声があがります。
「鉄って意外に柔らかいですね」と、和やかな雰囲気で体験が進んでいきます。


パーツが2つでき、これを溶接してつなげます。
ドキドキしながら溶接面をかぶり、トーチを持ち操作します。すると火花が飛び散り、思わずビックリ!
「半自動溶接は火花が出ますが、比較的簡単にできて溶接速度も速いですよ」講師に教えてもらいながら少しずつコツをつかみ、作品を完成させました。
スタンドを眺めて出来栄えに満足し、「楽しかった」「今度はフライパンも作ってみたい」と笑顔で話してくれました。




鍛鉄の技を見る

溶接ワークショップの講師、川井 香和さん。
ワークショップの初級から上級まで、すべてのコースの講師をメインで担当しています。
多摩美術大学美術学部工芸学科出身で、大学在籍時に溶接に出会いました。
鍛鉄製品や装飾金物を手作りしている会社に入社して2年目。依頼ごとに製造技術向上が実感できるのがとてもうれしいと話してくれました。
鍛鉄の工房に移動して、葉っぱの製作を見学します。
鉄の丸棒をバーナーで熱する。赤くなったら、ハンマーで叩く。これを繰り返して、形を整えていきます。
そして、丸棒は繊細な葉っぱになりました。



次に、葉っぱを茎となる鉄の棒につける作業をTIG溶接で行います。


鍛鉄製品作りは共同で行うのではなく、1人で1製品を最後まで作り上げます。
近くには川井さんが製作したチューリップが置いてあり、鉄でありながら柔らかな曲線に目を奪われます。台の穴にペンをさして、ペン立てになるそう。
ひとつひとつ手作業で生み出した製品は、世界にひとつだけ、唯一無二のものです。

鍛鉄や溶接への思い
川井さんに話をうかがいました。
「鍛鉄製品(ロートアイアン)は主に建築装飾で扱われることが多く、建築のアクセサリー要素をもちながら、長い期間強度を持たせる必要があります。そのため、溶接は強固に美しく鍛造パーツをつなぎ合わせる役割を持っています。パーツとパーツが交わる内角はあえて溶接跡を見せる技法を用いるなど、溶接には様々な仕上げ方法があることが魅力だと感じています」
今後の目標について
「鍛鉄製品が暮らしの中で癒しの存在になるように、商品開発をしていきたいと考えています。鍛鉄は、製造工程で熱を加えることで容易に曲げたりして、表情の細工を施すことができます。美しい曲線を空間に造形できるようになることが私の最終目標です。鍛鉄と溶接を組み合わせることで鉄のしなやかな曲げを束ね、製作していきます」
そして最後に溶接に興味を抱いている方へ、メッセージをいただきました。
「金属のつなぎで使用する溶接ですが、意外と溶接に興味がある人は多いと感じています。私もまだまだ溶接は学び中の段階です。溶接をやってみたいという方は、弊社の溶接体験ワークショップに気軽に来ていただき、ものづくりを楽しんでいただければと思います」
こちらの溶接工房では、初心者向けに基本的な溶接の体験をはじめ、レトロスツールやキャンピングシェルフ製作など、溶接を楽しむことができる様々なメニューを用意しているそうです。
※画像のクリックで拡大表示
▼鍛鐡工房イヌイ
https://www.inuifusion.co.jp/workshop/

