はんだ付けで何作る? ~2024わくわくどきどき夏休み工作スタジオ in 都立工科高校~

都立工業系高校の教員や生徒が、小学生に工作を教える「わくわくどきどき夏休み工作スタジオ」。作品の製作を通してものづくりへの興味・関心が高まり、達成感を味わうことができるプログラムとなっています。
将来のものづくり産業を支える人材の育成をねらいとした、東京都教育委員会が開催する恒例イベントです。
2024年度は7~8月にかけ実施され、19校が参加。「はんだ付け」をする講座がいくつかあり、様子を見に行ってきました。

【参考】はんだ付け -溶接豆知識
溶接には、「融接」、「圧接」、「ろう接」の3つの接合形態があります。
「はんだ付け」は「ろう接」の一種で、はんだを用い、母材をできるだけ溶融しないで行う溶接方法。
ろう付け(参考:レポート「ろう付けで、アクセサリー作りに挑戦!」)との違いは融点(固体が融解し液体になる時の温度)で、はんだ付けは450℃未満、ろう付けは450℃以上です。

(1)光センシングカー製作(親子ものづくり講座) -葛西工科高等学校-

小学5、6年生を対象にした講座。親子での参加です。
初めに、先生から今日製作する光センシングカーはどこにも売っていない本校オリジナルですとの話に、小学生から歓声が上がりました。
はんだ付けは初めてという小学生がほとんどで、はんだごてが高温になるので火傷に注意して下さいの言葉に、緊張した面持ちの子もいました。
付き添いのお母さんも隣で心配そうに見ていましたが、サポートの高校生がひとつひとつ丁寧に教えたり、そばで見守ったりしています。
一緒に集中して作業を進めていきました。

完成後、高校生がスマートフォンの光をセンサーに当てて動作確認をします。タイヤが回ると、小学生はさっそくスマートフォンを使ってセンシングカーを走らせます。
前進したり右に曲がったりと机の上のスペースでは足らずに、床に置いて夢中で操作している小学生もいました。

(2)はんだ付けでデジタル時計を作ろう -墨田工科高等学校-

小学5、6年生を対象にした講座。
製作するデジタル時計は「時間-温度-日付-曜日」の順に切り替わり、グリーンの文字が鮮やかです。
今回ははんだ付けが100ヶ所ぐらいあり、2時間ほどかかるとのこと。
半数以上の小学生がはんだ付け未経験のため、時々手を止めて隣や前の席の子の様子や、前方に映し出されたスクリーンの説明を見ながら、じっくり取り組みます。
サポートの高校生も各グループをまわって積極的に声掛けし、ちょっとしたコツを教えてあげるなど、いろいろ工夫して説明していました。

はんだ付け作業が終わり、時計を組み立てて完成です。
なかにはデジタル表示されずに戸惑う小学生もいましたが、すかさず高校生がチェック。修正後、無事に表示されほっとした表情になり、「やったね!」と笑顔で高校生に話します。小学生にはとても頼もしいお兄さんのようです。
何度も表示を切り替え、満足気に時計を見つめていました。

(3)電子工作【電子オルガンを作ろう】 -荒川工科高等学校-

小学3~6年生を対象にした講座。
電子オルガンは、8個のスイッチとオクターブ切り替えスイッチの組み合わせで演奏します。また、オルゴールにもなるとのこと。
机には説明書の他に、基本の8音だけで演奏できる曲の楽譜も準備されていました。
製作前に、はんだ付けの練習時間が設けられ、高校生が隣に座ってアドバイスします。お互いちょっと恥ずかしそうにしていましたが、少しずつ緊張がほぐれてきます。
慣れたところで、いよいよ本番。小学生は作業が進むにつれてリラックスし、サポートの高校生と楽しそうに話をしながらも一生懸命取り組んでいました。

はんだ付けが出来たら、部品を順に組み立てていきます。最後にIC(集積回路)をソケットにはめて完成です。
音を出してみたり、楽譜を見ながら練習したりと楽しんでいます。
教室の中は小学生が奏でる優しい音と、それをみつめる高校生の笑顔に包まれていました。

最後に

各工科高校とも、先生方や生徒の皆さんがしっかり事前準備し運営されたため、火傷等のケガもなくスムーズに講座が行われました。また、教え方にもそれぞれ工夫がなされていました。
ものづくりを体験した小学生からは達成感あふれる笑顔が見られ、「初めは緊張したけれど、楽しかった。」「はんだ付け、面白かった。またやってみたい。」と多くの声が。
また、大活躍だったサポートの生徒。「自分達がやっていることを小学生に教えられてうれしい。」「人に教えるのは大変だなと思った。」そして、「ものづくりの面白さを知ってもらいたい。」とのコメントもありました。
先生からは「小学生に教えることによって、自分達が勉強してきたことがちゃんと力になっていることがわかる。それが彼らの自信や財産になると思います。」との話がありました。

【参考】溶接の資格や種類
 ・溶接技能者について(日本溶接協会 溶接lab)
 ・マイクロソルダリング技術要員(※)(日本溶接協会)
  (※)マイクロソルダリング…微細はんだ付け

取材協力
 ・葛西工科高等学校
 ・墨田工科高等学校
 ・荒川工科高等学校